「海のある奈良に死す」有栖川有栖
久々に火村シリーズの長編をガッツリ読み直したので、その読書ノートなどをば。
読んだのは火村シリーズの「海のある奈良に死す」
その前に長編となると、……インド倶楽部の謎だったか、狩人の悪夢だったか。
火村シリーズとしては4作目、長編では3作目の本作。
後々、準レギュラーとなる編集者の片桐さんが初登場している。
ちなみに、片桐さんは火村シリーズより前の著者のノンシリーズ長編に登場しているので、実はデビューが火村よりも前だったりするそうだ。
それから、この後ちょいちょい火村やアリスと飲んでいる朝井小夜子女史も参戦。
個人的に朝井女史と言えば、火村シリーズの掌編「推理合戦」に登場し受話器を落とすシーンが記憶に残っている。
といっても、知らない人には「なんじゃそりゃ」なのだろうけれども、そんな女史のシリーズ初登場が本作とのこと。
事件はこうして始まった
ストーリーは、東京の出版社を訪れたアリスが同業者(兼友人兼ライバル?)の赤星氏と出会うところから始まる。
丁度、明日明後日にも新刊が書店に並ぶタイミングだったアリスは、取材旅行に出かけるという赤星氏に新刊を献本し、別れる。
で、その赤星氏が遺体で発見される。
という話。
そこから、同業者で友人でライバルで、直前に顔を合わせ、お互いの新作に思いを馳せ、旅の無事を祈ったとか祈らなかったとかという間柄のアリスは、火村と供に赤星氏の死の謎を解く旅に出る。
京都から、あっちに行き、こっちに行き。
東京以西をウロウロ。
赤星氏はいったい誰に殺されたのか。
なぜ殺されたのか?
どんな小説を書こうと、取材に出たのか。
これらの謎を解き明かすべく、火村もアリスも動きまわる。
で、その動きが、赤星氏が書こうとしていた話とリンクしてくるとか来ないとか。
片桐氏も出張し、捜査の一端を担い、帰りの新幹線での一コマは、少しほっこり。
面用で奇天烈でワンダフルでミステリアス
珍しく、火村が推理の為に大移動をした作品だったかな。
いつもは、兵庫か京都か大阪か、行く先々も各府県内の証人や容疑者のところで、移動距離としては比較的近所な気がしているけれど。
それは、まあ、長編だし。
トラベルミステリーの感じも少しあるような気もしてくる。
作中で、奈良のお水取り神事について触れているが、そこで思い出したのは木谷恭介の宮之原シリーズ。
シリーズの1作に、奈良東大寺のお水取りの夜に撥縷尺(ばちるのしゃく)が盗まれたという作品があって、そこでお水取りについては一通り書いてあった、気がする。
というか、撥縷尺については、このブログのどっかで触れた気もする。
ま、本編とは関係ないけれど。
福井で送った水が何故奈良で湧くのか、神事ってことに、面用で奇天烈でワンダフルでミステリアス。
ワンダフルでミステリアスからの連想と言うワケではないが、本作で朝井女史と火村とアリスが初めて肩を並べてお酒を共にします。
そのときのバーが「パンゲア」
そのパンゲアが最後に絡んで来るという。
本編とは直接関係はないけれど、読んでて楽しい繋がりでした。

